翻訳テクニック集 目次

不要な使役と抽象名詞の複合

使役抽象名詞が複合している場合があります。

(文3-1) 風は強かったが、比較的暖かさを感じさせる日だった。

「感じさせる」は他動詞「感じる」に使役の助動詞「させる」が付いたものです。 感じる + させる (使役)

考え方は「驚かされた」と同じです。わざわざ他者を行為者に据える必要はありません。自分の視点で「感じる」と書けば十分です。

(文3-2) 風は強かったが、比較的暖かさを感じる日だった。

ただし、この文には抽象名詞「暖かさ」もあります。抽象名詞を使わずに、人間が物事をどのように捉えるか考え、その捉え方に素直に従って書くと、文章が分かりやすく、読みやすくなります。人間が認識する順序は、 風は強いが比較的暖かいと感じる
→ 暖かいことを「暖かさ」と抽象化する

決して、暖かさという抽象的な概念を先に認識するのではなく、暖かいと感じた後に暖かさという抽象概念を取り出すのです。

人間のこの感覚に従って、素直に文に書きましょう。

(文3-3) 風は強かったが、比較的暖かい日だった。

元の文と比較してみましょう。

(文3-1) 風は強かったが、比較的暖かさを感じさせる日だった。

(文3-3) 風は強かったが、比較的暖かい日だった。

元の文が相当回りくどい表現をしていることが分かります。元の抽象名詞にも使役にも特段の表現意図は感じられません。おそらく、ただ何となく、よく見かける表現 (使役の乱用) に引きずられて文3-1を書いたのでしょう。私たちは日本に暮らし、朝から晩まで日本語を使っていますが、特に意識せずに書く日本語文は意外と怪しいようです。

商品として売る文章を何となく書いてはいけないのです。

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