関係詞の翻訳

キーポイント
  • 前の文に説明を追加する関係詞は、関係詞の位置で2文に切って訳し下ろす
  • whereは「ここで、……」と翻訳する
  • 関係詞の前に前置詞がある場合は、前置詞の意味を訳文に反映させる

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関係詞の訳し下ろし

関係詞にはwhich、that、who、where、whenなどがあります。 関係詞は、前の文に説明を追加するために使われます。 どのように説明を追加するかによって以下の2つの用法に分けられます。

前の名詞の意味を限定する (制限用法)
The word 'caller' refers to a function that calls another function.
→「that calls another function」が「a function」を修飾している。いろいろなfunctionが存在する中で、another functionをcallするfunctionについて言及している。
前の名詞や文を受けて、詳細や補足を追加する (非制限用法)
This field is specified as an asterisk (*), which indicates the absence of data.
→ 前半の説明「This field is specified as an asterisk (*)」に対して「(the asterisk) indicates the absence of data」という説明を付け加えている。

制限用法の場合は、関係代名詞から後の部分を訳し上げます (英文の後ろから前に翻訳します)。

The word 'caller' refers to a function that calls another function.

「呼び出し側」という用語は、他の関数を呼び出す関数を指します。

非制限用法の場合は、関係代名詞の位置で文を切り、2つの要素に分解して翻訳します。前記の英文 This field is specified as an asterisk (*), which indicates the absence of data. を例にとって翻訳の過程を見ていきましょう。

最初のステップとしてwhichの位置で文を切り、2つの要素に分解します。要領はto不定詞分詞構文so that節の翻訳と似ています。

This field is specified as an asterisk (*) / which indicates the absence of data.

次に、前半と後半をそれぞれ日本語に翻訳します。

このフィールドには*が指定されています / データが存在しないことを示します

最後に、それぞれの訳文を結合し、必要に応じて文末を変更します。

このフィールドには*が指定されており、データが存在しないことが示されています。

英文テクニカルライティングでは「制限用法の場合はthatを使用し、非制限用法の場合はwhichを使用する」ように推奨されますが、実際の文書では必ずしもそのように使い分けられていると限りません。thatかwhichかで意味を判断するのは危険です。

また、実際の文書では非制限用法の関係代名詞にコンマが伴わない場合もあるので、コンマの有無に頼って意味を判断するのも危険です。 例えば、 This field is specified as an asterisk (*) which indicates the absence of data. ではwhichの前にコンマがありませんが、この英文を無理に訳し上げると以下のようになります。 このフィールドには、データが存在しないことを示すアスタリスク (*) が指定されています。

文頭の「このフィールドには」に続く説明が長すぎるため、読んでいると途中で苦しくなります。日本語として不自然な印象も強くなってしまいました。which以下が長くなると、さらに翻訳しにくくなるだけでなく、訳文も長くなって理解不能になってしまいます。

訳し上げると、翻訳者の負担が大きくなる上に、読者にとっても訳文が読みにくく分かりにくくなり、いいことがありません。可能な限り訳し下ろすように心がけましょう。

where

whereが多用される状況として、具体的なもので置き換えられる代表形 (数学の変数など) の意味を説明するときが挙げられます。

The syntax is as follows:
delete(filename)
where filename is the name of a file to be deleted. For example, delete(abc.txt) deletes the file abc.txt.

このwhereは慣用表現なので「ここで、……」と固定的に翻訳します。

構文は以下のとおりです。
delete(filename)
ここで、filenameは削除するファイルの名前です。例えば、delete(abc.txt) はファイルabc.txtを削除します。

whereを「変数の意味は以下のとおりです」などと翻訳している事例も見かけますが、理工系の文書でそのように書いているものは見たことがありません。whereには、理工系の文書で一般的な「ここで、……」という表現を使用してください。

前置詞を伴う関係代名詞

関係代名詞の前に前置詞が置かれる場合もあります。

Specify the directory in which user programs are stored.

whichの前にinが付いていますが、多くの場合、このinを意識しなくても日本語に翻訳することができます。

ユーザ プログラムが格納されるディレクトリを指定します。
非制限用法で前置詞が使用される場合もあります。

The spawnxx functions take a constant, for which macro names such as P_WAIT, P_NOWAIT, and P_OVERLAY are defined in process.h.

この英文は以下の2文を結合したものと考えることができます。

The spawnxx functions take a constant.

The macro names for them such as P_WAIT, P_NOWAIT, and P_OVERLAY are defined in process.h.

それぞれの文を翻訳すると以下のようになります。

spawnxx関数は定数をとります。

これらに対するマクロ名 (P_WAIT、P_NOWAIT、P_OVERLAYなど) はprocess.hで定義されています。

最後に訳文をつなげます。

spawnxx関数は定数をとります。これらに対するマクロ名 (P_WAIT、P_NOWAIT、P_OVERLAYなど) はprocess.hで定義されています。

多くの場合、マニュアルの翻訳では「これらに対するマクロ名……」という訳文で許容されますが、「これらの……」が直訳的で気に入らないという場合は以下のように書き換えることができます。

spawnxx関数は定数をとります。これらの定数に対するマクロ名 (P_WAIT、P_NOWAIT、P_OVERLAYなど) はprocess.hで定義されています。

以上の英文は前置詞を無視して翻訳することができました。 しかし、前置詞を明示的に訳出しなければならない場合もあります。 例えば、ファイルのコピーについて説明しているときに以下の2種類の英文が出てくることがあります。

the directory from which the files are copied.

the directory to which the files are copied.

fromやtoを無視して翻訳するといずれも以下の訳文になってしまいます。

ファイルをコピーするディレクトリ

この訳文では両者を区別できず、読者が混乱してしまうため、以下のようにfromやtoを明示的に訳出しなければなりません。

ファイルのコピーディレクトリ
ファイルのコピーディレクトリ

このような事例は頻出しませんが、まれなケースだからこそ見落としがちです。 関係代名詞に前置詞が付いているときは、その前置詞の意味が訳文に反映されているかどうか必ず確認してください。

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