翻訳テクニック集 目次

前の単語を受けるthis

英語では、前の文に出てきた単語や内容を次の文で受けるときに、主語に代名詞を使って受けることも多いです。以下の例ではthe portをthisで受けています。

Specify the port to communicate with the server. In a secure environment, this is typically port 8080.

サーバと通信するためのポートを指定します。セキュア環境では、これは一般にポート8080です。

thisで受けているからといって、そのまま「これ」と翻訳してしまっては日本語らしくありません。限られた予算で大量のマニュアルを安く翻訳しなければならない場合はこのような翻訳にも目をつむることになるでしょう。ただし、それはあくまで「通じればよい」という程度の翻訳しか求めない場合の話。ここでは日本語らしさを追求することにします。

日本語では、既出の単語を「これは」で受けません。英文のthisを日本語の「これ」に置き換えても、「これ」が何を指すか判然としないことが多いです。

前記の例文の場合は、thisを訳文から省略してしまうのが普通です。

サーバと通信するためのポートを指定します。セキュア環境では一般にポート8080です。

何がポート8080であるかを述べずに単に「ポート8080です」と書くだけでは唐突に感じる人もいるでしょう。少し書き換えましょう。

サーバと通信するためのポートを指定します。セキュア環境ではポート8080が一般的です。
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