翻訳テクニック集 目次

known asは「呼ばれる」?

製品や機能の名称を紹介するときにはknownやcalledが使われます。

Formerly this product is known as XYZ.

英語では受動態で書きます。英語では文法上、主語が必要ですが、能動態で書こうとすると誰がそのように呼んでいる (呼んだ) かを明示しなければなりません。しかし、命名したのはweですし、利用者youもその名称を使いますし、世間一般にtheyがそう呼んでいるとも考えられます。特定の主語で書くのは困難です。また、ここでの主題は製品や機能ですから、その主題を主語として提示するのが自然です。ごく自然な成り行きで受動態で書くことになります。

英文で受動態で書かれるためか、日本語訳でも受動態のままになっている例をよく見ます。

以前、この製品はXYZと呼ばれていました。

自ら命名したわけでなく、かつ広く世間一般 (あるいは業界一般) にこの名称で知られているなら、この書き方でよいでしょう。

しかし、この製品の製造元がカタログやマニュアルで説明する場合にこのように書かれていると、無責任な印象を受けます。製造元が自ら説明しているにもかかわらず「……と呼ばれている」と、まるで人ごとのような言い草だからです。どこかの誰かが勝手にそのように呼んでいるのではなく、自社でそのように命名したのですから、主体性をもってはっきりと書かなければなりません。

以前は本製品をXYZと呼んでいました。

さらに別の表現に書き換えることもできます。

以前の製品名はXYZでした。

旧バージョンの名称はXYZでした。

いろいろな書き方ができます。

補足説明なら (旧称XYZ) と括弧書きにして前後の文に組み込むこともできます。

いずれにしても、自社の主体性を前面に出さないと、読者に無責任な印象を与えてしまいます。

翻訳テクニック集 目次

翻訳講座のご案内

翻訳のお問い合わせはこちら