接続詞の翻訳

接続詞はいろいろあり、文脈に応じて適切に翻訳する必要がありますが、技術翻訳の入門段階では、まずこれだけ覚えましょう。

キーポイント
  • ifやwhenは「……する場合」と翻訳する
  • A before Bは「Aした後にBする」「AしてからBする」と翻訳する

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if

技術文書で条件を表す場合にはifが多用されますが、「もし……ならば」とは翻訳しません。

例を示します。

If there are errors, error messages appear in Errors pane.
(×) もしエラーがあるならば、[Errors] ペインにエラー メッセージが表示されます。
(○) エラーがある場合は、[Errors] ペインにエラー メッセージが表示されます。

「もし」という言葉には、通常想定されていないというニュアンスがあります。 しかし、技術文書では一般に想定される事態についてifが使用されるため、「もし」と翻訳するのは不適切です。

when

ifのほかに、whenによって条件を表す場合もあります。 この場合はifと同じ意味なので、ifと同じように翻訳します。 例を示します。

Lines are automatically wrapped when the Wrap Lines option is selected.
[Wrap Lines] オプションが選択されている場合は、行が自動的に折り返されます。

whenが時を表さない限り「……場合」と翻訳します。

before

beforeは接続詞としても前置詞としても使われます。接続詞の場合も前置詞の場合も翻訳の要領は同じなので、ここでは接続詞に分類して解説します。

時間的な前後関係を表す場合、A before Bは「Bの前にA」を意味しますが、「Bの前にA」ということは「Aの後にB」ということでもあります。

キーポイント

A before Bは「Aした後にBする」「AしてからBする」と翻訳する

「Bの前にA」と翻訳すると、英文を訳し上げる (後ろから前に翻訳する) 必要があります。つまり、原文を読みながらA部分をスキップし、そのA部分の翻訳を頭の中で保留しておいて、先にB部分を翻訳し、次にA部分に戻って翻訳することになります。長い英文を前に行ったり後ろに戻ったりしながら翻訳すると、うっかりミスが発生しやすくなります。

対照的に「Aの後にB」「AしてからB」と翻訳すれば、英文を訳し下ろす (英文の順序に沿って前から後ろに翻訳する) ことができます。訳し下ろすことで、翻訳中に頭の中に置いておく保留事項が少なくなり、ミスが発生しにくくなります。

例を示します。

Wait a few minutes before trying again.
(○) 再試行する前に数分待ってください。
(◎) 数分待った後に再試行してください。
(◎) 数分待ってから再試行してください。

原文ではwait a few minutes→try againという順序で記述されています。 before以降を訳し上げて「再試行する前に……」と翻訳しても誤訳ではありませんが、 原文の記述順序に従って「数分待つ→再試行する」という流れで翻訳すると、ユーザによる操作と同じ順序で記述できると同時に、翻訳も楽になります。

上記の例文は命令文なので、読者に強く促す必要がなければ、命令文の翻訳の原則に従って、単に「……します」と翻訳することができます。

Wait a few minutes before trying again.
(△) 再試行する前に数分待ちます。
(◎) 数分待った後に再試行します。
(◎) 数分待ってから再試行します。

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