翻訳テクニック集 目次

助動詞can

以下の英文を翻訳してみましょう。この英文は、becauseの訳を検討する項に掲載しているものです。

Do not capture the whole network because it might lead to out of memory errors. In case of large networks, you can use [Limit network size] option.

ネットワーク全体をキャプチャしないでください。なぜなら、メモリ不足エラーが発生する可能性があるからです。大規模なネットワークの場合は、[ネットワーク サイズの制限] オプションを使用できます。
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ネットワーク全体をキャプチャしないでください。メモリ不足エラーが発生する可能性があります。大規模なネットワークの場合は、[ネットワーク サイズの制限] オプションを使用できます。

ここでは、この例題の2文目を検討します。

2文目では助動詞canが使われています。canの基本的な意味は可能 (できる・できない) です。上記の英文でも、使用することが可能であるという意味で使われています。

canのもともとの意味は可能ですが、その可能の意味から発展してさまざまなニュアンスを帯びることがあります。

上記のcanもただの可能ではありません。上記の英文では、してはならないことを述べた後に、その回避策をyou can ...で述べています。読者に対して選択肢を提示していることは確かなのですが、文脈から考えると、できる・できないという話ではなさそうです。つまり、 [ネットワーク サイズの制限] オプションを使用できます。 と書いた場合は、使用しないという選択肢もあり得ますが、例題の文脈では、このオプションを使用しない選択肢を選べそうにありません。このオプションを使用しなければ、前半のDo not capture ...という指示に反することになります。

このcanは、可能の意味から発展して、軽い命令・義務・依頼のニュアンスを帯びています。[ネットワーク サイズの制限] オプションを使用しない選択肢がないなら「……できます」と翻訳するのは不適切です。

[ネットワーク サイズの制限] オプションを使用してください。

修正すると、全体の訳文は以下のようになります。「大規模なネットワークの場合は」の後の読点は不要なので、ついでに削除しました。

ネットワーク全体をキャプチャしないでください。メモリ不足エラーが発生する可能性があります。大規模なネットワークの場合は [ネットワーク サイズの制限] オプションを使用してください。
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