actionable (2)

5 2月

(前回から続く)

actionableは日本語に翻訳しにくい単語です。前回は、さまざまな辞書でactionableの意味を調べました。その結果、actionableは行動の根拠として使えることを表すことが分かりました。

今回は、その意味を踏まえてactionableの訳を考えていきます。

冒頭の例文を再掲します。

System Monitor Tool provides IT administrators with system operating status and actionable information.

このような文は、Webサイトでの製品説明やマニュアルのintroductionによく出てきます。上記の例文は、表面的にはSystem Monitor Toolの機能について説明していますが、単に機能を紹介しているだけではありません。actionableという単語から分かるように、この機能は人間によるactionにつながっています。この文は、製品が (その製品に組み込まれたSystem Monitor Toolを使うことで) ITシステムの管理に役立ち、ビジネスに貢献することを訴えているのです。

actionableの意味は、行動の根拠として使えることです。行動の根拠として使えることをビジネスの場面にふさわしく言い換えれば、意思決定の根拠になるということです。

System Monitor Toolは、システムの動作状態など、意思決定の基になる情報をIT管理者に提供します。
→ System Monitor Toolは、システムの動作状態など、意思決定に必要な情報をIT管理者に提供します。

原文ではsystem operating status and actionable informationですが、system operating statusがactionableでないとは考えられないので、system operating statusもactionable informationに含むと見なして翻訳しました。また、actionableは意思決定の根拠になるという意味ですが、「意思決定の基になる」、「意思決定に役立つ」、「意思決定を支援する」などでは製品をアピールする力が弱いので、一歩踏み込んで「意思決定に必要な」と訳出しています。

「意思決定」という訳でよいか迷う人もいるかもしれませんが、American Heritage dicionaryではactionableを以下のように説明しています。

1. Giving cause for legal action: an actionable statement.
2. Relating to or being information that allows a decision to be made or action to be taken.
3. Capable of being put into practice: proposed several actionable measures to reduce the federal deficit.

今回の例文は語義2の用法であり、はっきりとallows a decision to be made or action to be takenと書いています。この語義からも、意思決定に着目した翻訳でよいことが分かります。

これでactionableの訳が決まりました。ただし、provideをそのまま「提供」と翻訳しては単語を置き換えただけになってしまいます。「provide」で説明しているように、英語では当たり前のようにモノ中心の視点で語りますが、日本語でモノ中心の視点で語ることはありません。英語から日本語に翻訳するときには、モノ中心の視点から人中心の視点に書き換えると自然な日本語訳になります。

このツールの画面に各種の情報が表示されるなら「System Monitor Toolに……が表示される」と翻訳できます。このツールによって何らかのレポート ファイルが生成されるなら「報告 (レポート) される」と翻訳できます。冒頭の例文だけでは情報の出力先が分かりませんが、このツールは画面に情報を表示するものなので、「表示される」を採用することにします。

しかし、provideを「表示される」と翻訳すると、IT administratorsが浮いてしまいます。

(?) System Monitor Toolでは、システムの動作状態など、意思決定に必要な情報がIT管理者に表示されます。

原文ではprovides IT administrators with …となっており、表示内容を見るのはIT administratorsです。何のために表示するかといえば、IT administratorsがactionを起こせるようにするためです。このことから、actionの主体であるIT administratorsを「意思決定」にかけてよいことが分かります。

System Monitor Toolには、システムの動作状態など、IT管理者の意思決定に必要な情報が表示されます。

actionableもprovideもきれいにさばけました。製品がビジネスの現場で威力を発揮することが強く印象づけられる訳文になっています。actionableを「すぐに使用可能な」と翻訳した場合 (下記) と比べてみてください。

(?) System Monitor Toolは、IT管理者に、システムの動作状態とすぐに使用可能な情報を提供します。

冒頭の例文はactionableを切り出して2文に分けて翻訳することもできますが、今回はここまでにしておきます。

今回は係り先を調整したり (IT administratorsの係り先を変えました)、一歩踏み込んでactionableを「意思決定に必要な」と訳出したりと、逐語訳を超えた翻訳をしています。訳文の喉ごしがよくなりますが、このような翻訳は、思い込みたっぷりの誤訳と紙一重です。どこまで踏み込むか、微妙なさじ加減が求められます。

(連載終わり)


有限会社トランスフロンティア
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