actionable (1)

1 2月

先日、翻訳中にactionableという単語が出てきました。以下のような文でした (実際に翻訳した英文の特徴を残しつつ、内容は大きく変えてあります)。

System Monitor Tool provides IT administrators with system operating status and actionable information.

actionに-ableが付いて、actionが可能であることを表しています。それだけの単語ですが、日本語に翻訳しにくい言葉です。

辞書ではどのように説明されているでしょうか。オンライン版のプログレッシブ英和中辞典 (第4版) でactionableを引くと、以下のように説明されています。

1 ((叙述))〈言葉・行為などが〉提訴の理由になり得る
A slander is actionable.
名誉毀損 (きそん) は訴えることができる.
2 訴訟を受けるべき [免れない].
3 ((通例限定))〈計画などが〉実行できる;〈情報などが〉利用できる.

上記の例文の場合は3の意味が近そうですが、「利用できる」という解釈では意味をなしません。

(?) System Monitor Toolは、IT管理者に、システムの動作状態と利用できる情報を提供します。

利用できない情報を提供するツールなんて無意味です。ツールが提供する情報は利用できて当然です。また、「利用できる」という言葉のイメージはavailable to useであり、actionが可能かどうかという視点とは違う気がします。

大手出版社の辞書に適切な訳語がない場合に英辞郎を使う人も多いでしょう (私は基本的に使いませんが)。試しに「英辞郎on the WEB」を引いてみると、以下のように記載されています。

1. 《法律》起訴できる
2. すぐに使用[実施]可能な

しかし、「すぐに使用可能」という言葉のイメージはready to useであり、これもactionが可能かどうかという視点とは違います。

そもそもactionableはどういう意味なのでしょうか。こんなときに一番頼りになるのは英英辞典です。Merriam-Webster Onlineには以下の語義が載っています。

1: subject to or affording ground for an action or suit at law
2: capable of being acted on ・ actionable information

冒頭に掲げた例文ではactionableを2の意味で使っています。例文もそのものズバリ、actionable informationです。actionableの意味がcapable of being acted onですから、actionable informationは「informationがあり、そのinformationに基づいて行動できる」ことを表しています。

Merriam-Webster Onlineの画面を下にスクロールすると、「ACTIONABLE Defined for English Language Learners」として学習者向けの説明も載っています。

law: giving a reason to bring an action or a lawsuit against someone
: able to be used as a basis or reason for doing something

こちらの説明のほうが分かりやすいでしょう。actionableとは、何かを行うための (for doing something) 根拠として (as a basis or reason) 使える (able to be used) ことなのです。

ちなみに、私が大学生の頃に買った紙のMerriam-Webster’s Collegiate Dictionary Tenth Editionには1の語義しか載っていません。2の用法は比較的新しいようです。

新しい用法であれば、念のために他の辞書にも当たる必要があります。Oxford Dictionaryも引いてみましょう。こちらはイギリスの辞書です。以下のように説明されています。

1 Law
Giving sufficient reason to take legal action.
‘an actionable assertion’

2 Able to be done or acted on; having practical value.
‘insightful and actionable information on the effect advertising is having on your brand’

Oxford Dictionaryでも語義はほとんど同じですが、ほかにhaving practical valueという語義も掲載しています。しかし、practicalでない情報を提供するツールは無意味ですから、冒頭の例文にあるactionableをhaving practical valueと解釈するには無理があります。やはりable to be done or acted onと解釈すべきです。

英英辞典を引いてactionableの意味がはっきりしました。いよいよ訳語を検討していきます。英和辞典にあった「利用できる」や「すぐに使用可能」という訳は妥当でしょうか。

先ほど見たように、actionableの意味は、行動の根拠として使えることです。「利用できる」(available to use) や「すぐに使用可能」(ready to use) という解釈とはずいぶん違います。「すぐに使用可能」という訳は、使用するために時間や手間がかかるかどうかに焦点を当てています。しかし、actionableで着目しているのは時間や手間ではありません。行動の根拠になるかどうかなのです。「利用できる」という訳も、行動の根拠になるかどうかに着目していない点で不適切です。

以上の検討を踏まえて、actionableの訳を考えていきましょう。

(次回に続く)


有限会社トランスフロンティア
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