読書ノート: 北朝鮮はいま、何を考えているのか

29 1月

何かと物議を醸す東アジアの社会主義国、北朝鮮。独裁体制を敷き、核兵器やミサイルの開発に余念がなく、アメリカからならず者国家と名指しされている。2017年の夏には、ついにそのアメリカをほぼミサイルの射程に入れたとされる。

もちろん、北朝鮮とてただ闇雲に核開発やミサイル開発に邁進 (まいしんしているわけではない。 (ゆえあってのことだ。

「北朝鮮はいま、何を考えているのか」(平岩俊司 著、NHK出版新書)

そのものズバリのタイトルである。

北朝鮮は、かつて韓国より経済力があると言われたが、その戦後史をひも解くと、見事なまでの凋落 (ちょうらくぶりが浮かび上がる。

北朝鮮は時代の変化に追随できず、東アジアの中で孤立して現在に至る。

そう。著者は孤立と言っている。孤立といえば孤立だが、要するに置いてけぼりだ。

朝鮮戦争後に社会主義体制を敷いた北朝鮮は、後ろ盾としてソ連と中国を頼りにしていた。そのソ連で1980年代にゴルバチョフ体制が発足し、政治体制の改革が進む。中国も改革解放路線に (かじを切る。韓国は中国との関係を改善し、経済成長を実現し、ソウル オリンピック開催にこぎつける。

北朝鮮はソウル オリンピック妨害を画策して大韓航空機爆破事件を起こすが、韓国はその難局を乗り越えてソウル オリンピックを成功させる (1988年)。ソウル オリンピックにはソ連も中国も参加した。当然、韓国の国際的評価は高まり、北朝鮮の評価は落ちる。北朝鮮は自らの失策で南北格差を広げてしまった。

1990年代に入ると、韓国が中国・ソ連との国交を正常化し、北朝鮮は後ろ盾を失う。韓国経済はますます成長し、南北格差が決定的となった。

北朝鮮は完全に時流に乗り遅れ、置いてけぼりを食った。

その北朝鮮が起死回生を狙ってターゲットに定めたのがアメリカである。韓国も日本も背後にアメリカがついている。アメリカを押さえれば韓国も日本も押さえられる。アメリカを交渉のテーブルに引き出すにはどうするか。北朝鮮が選んだ道が、アメリカに核ミサイルを撃ち込める態勢を整えることだった。

その北朝鮮と各国との協議はこれまでに何度も行われた。しかし、各国の思惑が入り乱れ、危機回避の道筋が見えない。北朝鮮から遠く太平洋を挟むアメリカと、陸続きで同一民族の韓国では事情が異なる。日本・中国・ロシアにもそれぞれの思惑がある。北朝鮮をめぐっては戦争や体制崩壊・難民発生のリスクがあるが、それらのリスクと比較すると、まだ各国の思惑の差が大きいということなのだろう。

本書は、北朝鮮情勢を理解するための平易な入門書である。日本と韓国・北朝鮮・中国の関係を取り上げた本は多いが、ナショナリズムに乗るあおり系や日本礼賛の本が幅を利かせている。そのノイズに紛れて、本当によい本を探しにくい。東アジアについて真に理解を深めたいと考える人には、本書が大変よい足がかりになる。

【書誌情報】
書名: 北朝鮮はいま、何を考えているのか
著者: 平岩 俊司
出版元: NHK出版 (NHK出版新書)
出版年月: 2017年11月


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