provide

25 12月

英語では、製品が何かをprovideする、という表現をよく見かけます。例えば、Produk-Tという (架空の) 製品について以下のように記述されることがあります。

Produk-T provides a script compiler for customization.

日本語訳では、そのまま「提供する」としている事例を頻繁に見ます。

Produk-Tは、カスタマイズ用のスクリプト コンパイラを提供しています。

誤訳ではありません。実際、手元にあるリーダーズ英和辞典でprovideを引いてみると、以下の訳語が載っています。

provide
―vt
1 供給する, 提供する (supply); 用意 [準備] する, 支給する, あてがう.
(語義2以降は省略)

「提供する」で誤訳ではありませんが、「用意する」のほうがよいでしょう。

Produk-Tは、カスタマイズ用のスクリプト コンパイラを用意しています。

少しましになりましたが、まだ日本語としてしっくりしません。原因は、モノを主体として語っていることです。

原文ではProduk-T provides…とモノの視点から語っていますが、そのような書き方ができるのは英語だからです。対照的に、日本語では、モノが何かの行為をするという見方をしません。日本語では、基本的に何かをするのは人であり、違和感なく擬人化できない限り、モノが何かの行為をすることはないのです。

こういう場合に効果的なのが受け身の表現です。

Produk-Tには、カスタマイズ用のスクリプト コンパイラが用意されています。

この日本語文から推察されるのは、ベンダ (製造元) の人たちが用意したという状況です。受け身に書き換えることで、モノ中心の視点から人中心の視点に移したわけです。

受け身を使わずに、自動詞で翻訳することもできます。

Produk-Tには、カスタマイズ用のスクリプト コンパイラが備わっています。

他動詞「用意する」の代わりに自動詞「備わる」を使いました。この訳文でも、ベンダの人たちがこの製品にスクリプト コンパイラを備えた、という見方をしています。モノ中心の視点ではなく、人中心の視点で語っています。

いくつか訳例を出しましたが、一番よいのは自動詞を使うこと。受け身を使わずにシンプルに書ければ、それが最善です。ちょうどよい自動詞が見つからない場合は、受け身を使うことになります。最悪なのは、モノ視点で書くこと。

【まとめ】
英語では当たり前のようにモノ中心の視点で語りますが、日本語でモノ中心の視点で語ることはありません。英語から日本語に翻訳するときには、モノ中心の視点から人中心の視点に書き換えると自然な日本語訳になります。できるだけ自動詞を使うこと。自動詞が使えなければ受け身で書くこと。


有限会社トランスフロンティア
名古屋で通学制の翻訳講座を開いています。詳しくはスクール案内へ。
理工系専門書、IT・電気工学・その他分野の英→日翻訳を承っております。2001年創業以来1000件以上の翻訳実績。お見積もり・お問い合わせはこちらからどうぞ。