insightふたたび

17 7月

新聞にこんな記事が出ていました。

ビッグデータ解析「京」が世界一維持
スパコン性能ランク

 理化学研究所などは十三日、スーパーコンピューターが大量のデータを処理して有用な情報を引き出す「ビッグデータ解析」の性能ランキングで、日本の「京」(神戸市) が、中国の新型機「神威太湖之光」を抑えて世界一位を維持したと発表した。…(以下省略)…

ビッグデータ解析を、大量のデータを処理して有用な情報を引き出すことと説明しています。「有用な情報」という言葉に注目してください。

この記事は国内の一般紙 (中日新聞2016年7月14日朝刊) に掲載されたものです。理化学研究所の発表ですから、日本人の記者が最初から日本語で書き下ろした文章です。外国語の記事を翻訳したものではありません。

上記の記事にある「有用な情報」は、図らずも私が過去の翻訳でinsightに当てた訳語です。「有用な情報を引き出す」を英語で書くならgain insightです。ところが、このgain insightを日本語に翻訳するとなると、なぜか「洞察を得る」になってしまうのです。

この「洞察」という訳語は外資系IT企業のWebサイトで頻繁に見ます。ひどいときには、カタカナに置き換えただけで「インサイト」としているページもあります。

手元にあるリーダーズ英和辞典を引いてみると、確かにinsightの訳語として「洞察 (力)」が挙げられています。しかし、上記の記事にあるとおり、日本語ではこの意味で「洞察」と言うことはありません。「洞察」と言われてもピンときませんし、違和感ばかりが募ります。

安易な訳語を羅列したページを読まされるユーザの胸の中には、このような小さな違和感が次から次へと降り積もります。「外資系の会社のWebサイトって、一応漢字やカナが並んで日本語のような形はしてるけど、読んだ後に頭の中に何も残らない」と言う声を実際に聞きます。小さな不満が積もり積もって製品への不満につながらないように、何らかの対策が必要でしょう。少なくとも、企業の顔、営業の窓口ともいえるWebサイトには、あまり安易な翻訳を並べたくないものです。

以前にこのブログでも取り上げましたが (「insightは「洞察」?」を参照)、辞書にある訳語を当てはめても日本語になじみませんし、カタカナに置き換えればよいわけでもありません。

新しい概念を日本語に取り込むときには、意味をきちんと伝える翻訳を考えたいものです。


有限会社トランスフロンティア
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