Hydrogen (Grid energy storage) (2) 翻訳サンプル補足 (3)

8 2月

資源 (新エネルギー) 分野から、水素資源の翻訳サンプルを掲載しました。読みやすく分かりやすい訳文を作成するにあたって考慮した事項について引き続き触れていきます。

前回の続きとして3文目を見ていきます。原文は以下のようになっています。

High temperature electrolysis and high pressure electrolysis are two techniques by which the efficiency of hydrogen production may be able to be increased.

まずtwo techniquesと述べた後で、その具体的な内容をby which the efficiency …で説明しています。つまり、この英文は下記の構造をしています。

High temperature electrolysis and high pressure electrolysis are [two techniques] ← [by which the efficiency of hydrogen production may be able to be increased]

この英文の構造をそのまま日本語訳に反映させると、以下の逐語訳が出来上がります。

高温電気分解と高圧電気分解は、水素製造の効率を向上させられる可能性がある2つの技術です。

「……電気分解は」が「2つの技術です」にかかっていますが、遠く離れてしまっています。

この逐語訳の構造は以下のとおりです。

     高温電気分解と高圧電気分解は →
水素製造の効率を向上させられる可能性がある → 2つの技術です。

読者はまず「……電気分解は」を読んだ後、その電気分解が何であるかが分からないので、解釈を保留して読み進めます。長い連体修飾「水素製造の効率を向上させられる可能性がある」を読み終えると、ようやく先ほどの「……電気分解は」の係り先が見つかり、頭の中の保留事項が解消されます。

読みやすく分かりやすい訳文を書くには、読者の頭の中に保留事項を持ち込んではなりません。そのためには、密接に結びつく語句を互いに近づける必要があります。

翻訳サンプルでは、全体を訳し下ろすことで、読者の頭の中に保留事項を持ち込まないようにしています。

高温電気分解や高圧電気分解の技術を利用することで水素の製造効率を改善できると考えられています。

原文にあるtwoは訳文から省略しました。two techniquesはせいぜいby which …を受ける役割しか果たしていないためです。ですから、techniquesも省略して下記のように翻訳することもできます。

高温電気分解や高圧電気分解を利用することで水素の製造効率を改善できると考えられています。

今回の翻訳サンプルでは、原文にあるtechniquesを訳文に残しておきました。

ここまで、読みやすく分かりやすい訳文を書くための着眼点について翻訳技術の観点から見てきましたが、原文そのものを見直すアプローチも可能です。

そもそも、原文自体がかなり回りくどい書き方をしています。

(原文) High temperature electrolysis and high pressure electrolysis are two techniques by which the efficiency of hydrogen production may be able to be increased.

この英文はもっとシンプルに書き換えることができます。

High temperature electrolysis and high pressure electrolysis may be able to increase the efficiency of hydrogen production.

この英文なら、構造に惑わされずに簡潔な訳文を作れるでしょう。

英文の構造そのままの逐語訳と私の翻訳サンプルの間には、語順のほかにも微妙な違いがあります。andの訳出方法に触れないわけにはいきません。次回はこのandについて説明します。

注:
1. 原文は英語版Wikipediaから転載しました。
2. 上記の翻訳サンプルは、クリエイティブ・コモンズ・表示・継承ライセンス3.0のもとで公表されたウィキペディアの項目「Grid energy storage」を素材として二次利用しています。


有限会社トランスフロンティア
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