Hydrogen (Grid energy storage) (2) 翻訳サンプル補足 (1)

6 2月

前回は資源 (新エネルギー) 分野の翻訳サンプルを掲載しました。今回は、この翻訳サンプルを作成するにあたって、訳文を読みやすく分かりやすくするために考慮した事項について触れます。

今回の翻訳サンプルでも、基本的な考え方として、修飾節が長くなりすぎないように翻訳しています。1文目にもその考え方が表れています。

水素を製造するには、水蒸気を使用して天然ガスを改質するか、水を水素と酸素に電気分解します (「水素の製造」を参照)。

Hydrogen can be produced either by reforming natural gas with steam or by the electrolysis of water into hydrogen and oxygen (see hydrogen production).

(1) 訳し下ろし

翻訳を勉強している人はすぐに気がつくでしょう。典型的なby doingの訳し下ろしです。訳し上げた場合 (下記) と比較してみてください。

水素は、水蒸気を使用して天然ガスを改質するか、または水を水素と酸素に電気分解するかのいずれかの方法で製造できます (「水素の製造」を参照)。

注: 訳し下ろすとは、原文の前から後ろに向かって翻訳すること。訳し上げるとは、原文の後ろから前にさかのぼって翻訳すること。

訳し上げると、主題「水素は」と述語「製造できます」が遠く離れてしまいます。読者は、水素についての話だということは分かりますが、水素の何についての話なのかは、文末に至るまで分かりません。水素の製造についての話だということを最初に読者に示しておくと親切です。

密接に結びつく語句は近くに置く。読者の頭の中に保留事項を持ち込まない。読みやすく分かりやすい訳文を書くための基本原則です。

(2) either … or …

翻訳サンプルではeitherを訳出していません。eitherをまったく無視して

Hydrogen can be produced by reforming … or by the electrolysis of …

であるかのように翻訳しています。orで択一を表せますから、eitherは不要です。

さらに、訳し上げの例で示した逐語訳では「……か、または……か」と「または」を入れています。このように書く人も多いのですが、この「または」も不要です。「か」と「または」は同じ意味を表しており、重言 (同じ意味の語を重ねること) です。文学作品ではなく技術の解説ですから、回りくどい表現をしてはなりません。重言は使わないようにすべきです。

次回は2文目を見ていきます。

注:
1. 原文は英語版Wikipediaから転載しました。
2. 上記の翻訳サンプルは、クリエイティブ・コモンズ・表示・継承ライセンス3.0のもとで公表されたウィキペディアの項目「Grid energy storage」を素材として二次利用しています。


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