不要な受け身表現

18 1月

(連載第1回はこちら)

前回まで、何気なく使われる不要な受け身不要な使役によって文が回りくどくなり、表現がぼやけることを見てきました。

受け身は乱用される傾向があり、日常的に多くの事例が見つかります。

(文10) 工具は壁に整然と掛けられていた。壁にはそれぞれの工具の輪郭が描かれており、どの工具をどの場所に保管するかが一目で分かる。その方式に、なるほど、とうなずかされた。

この文では受け身を使って「うなずかされた」と書いています。「うなずかされた」の構造は前回の「驚かされた」より複雑です。

うなずく (自動詞) + せる (使役) + られる (受け身) + た (過去)

「うなずかされた」などと言われると、筆者が相手に頭をつかまれて無理やり下を向かされた場面を想像してしまいます。

やはりこの例でも、とりたてて「させられる」と書く必要はありません。

(文11) 工具は壁に整然と掛けられていた。壁にはそれぞれの工具の輪郭が描かれており、どの工具をどの場所に保管するかが一目で分かる。その方式に、なるほど、とうなずいた。

受け身を使わずに書けば、書き手が感心した様子がまっすぐに伝わります。

もう一つ、似た例を挙げましょう。

(文12) 実際の画面を見せてもらい、「なるほど」と感心させられた。

ここでも使役と受け身を使って「感心させられた」と書いていますが (感心する+せる+られる+た)、使役も受け身も必要ありません。文の前半「実際の画面を見せてもらい」では書き手の視点で語っています。後半も、その視点をそのまま引き継げば素直な文章になります。

(文13) 実際の画面を見せてもらい、「なるほど」と感心した。

繰り返しますが、無駄な言葉を削ることで、力強く生き生きした表現になります。「何となく」で書く文章ほどいい加減なものはありません。

(次回に続く)


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