不要な使役と抽象名詞の組み合わせ

15 1月

(連載第1回はこちら)

もう1つ例を挙げましょう。

(文7) 風は強かったが、比較的暖かさを感じさせる日だった。

「感じさせる」は他動詞「感じる」に使役の助動詞「させる」が付いたものです。

感じる + させる (使役)

考え方は以前の「驚かされた」と同じです。わざわざ他者を行為者に据える必要はありません。自分の視点で「感じる」と書けば十分です。

(文8) 風は強かったが、比較的暖かさを感じる日だった。

ただし、この文にも抽象名詞「暖かさ」があります。前回の例と同様に、人間が物事をどのように捉えるか考え、その捉え方に素直に従って書くと、文章が分かりやすく、読みやすくなります。

風は強いが比較的暖かいと感じる
→ 暖かいことを「暖かさ」と抽象化する

決して、暖かさという抽象的な概念を先に認識するのではなく、暖かいと感じた後に暖かさという抽象概念を取り出すのです。

人間のこの感覚を素直に文章に書きましょう。

(文9) 風は強かったが、比較的暖かい日だった。

元の文と比較してみましょう。

(文7) 風は強かったが、比較的暖かさを感じさせる日だった。

(文9) 風は強かったが、比較的暖かい日だった。

元の文が相当回りくどい表現をしていることが分かります。元の抽象名詞にも使役にも特段の表現意図は感じられません。おそらく、ただ何となく、よく見かける表現に引きずられて文7を書いたのでしょう。私たちは日本に暮らし、朝から晩まで日本語を使っていますが、特に意識せずに「何となく」書く日本語文は意外と怪しいようです。商品として売る文章を「何となく」書いてはいけないのです。

(次回に続く)


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