不要な使役

4 1月

(連載第1回はこちら)

前回は受け身を取り上げましたが、ほかに乱用される表現として使役があります。

(文4) 現状では現場の作業員が個別に考えて実行しているに過ぎないため、作業員によってコンクリートの強度に大きな差を生じさせているのではないか。

この文に出てくる「生じさせている」は、「生じる」という自動詞に使役の助動詞「させる」と継続の補助動詞「いる」が付いたものです。

生じる (自動詞) + させる (使役) + いる (継続)

この文では、以下の2つの事実を挙げています。

  1. 現状では現場の作業員が個別に考えて実行しているに過ぎない
  2. 作業員によってコンクリートの強度に大きな差がある

そして、この2つの事実に因果関係があり、前者を原因、後者を結果と推定しています (……を生じさせているのではないか)。

この認知の流れをそのまま文として書けば、書き手が何をどう考えたかがストレートに伝わります。

(文5) 現状では現場の作業員が個別に考えて実行しているに過ぎないため、作業員によってコンクリートの強度に大きな差が生じているのではないか。

「生じさせている」を「生じている」に書き換えました。

わざわざ原因を中心に据えて

(原因) が (結果) を生じさせる

と書く必要はなくて、

(原因) のために (結果) が生じる

と書けば十分です。これで因果関係も明確に表現できますし、余計な言葉がないので、書き手の意図も伝わりやすくなります。

今回取り上げたのは使役であり、前回の受け身 (驚かされた) とは異なりますが、わざわざ他の事物を行為者に据える必要がないことは同じです。

ただし、「生じる」という単語をそのまま使うのは問題です。

(次回に続く)


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