抽象名詞を避ける

12 1月

(連載第1回はこちら)

前回は不要な使役表現を取り上げ、余分な言葉を省くと文章が簡潔になると説明しました。具体的には、以下の文4から使役表現を取り除いて文5に書き換えました。

(文4) 現状では現場の作業員が個別に考えて実行しているに過ぎないため、作業員によってコンクリートの強度に大きな差を生じさせているのではないか。

(文5) 現状では現場の作業員が個別に考えて実行しているに過ぎないため、作業員によってコンクリートの強度に大きな差が生じているのではないか。

ただし、この状態ではまだ無駄な言葉が残っています。

この文の「生じる」は重要な意味を担っていません。伝えたいのは、作業員によってコンクリートの強度にばらつきがあることです。決して何かが生じていることを伝えたいのではありません。

ここでも、人間が物事をどのように捉えるか考えると分かりやすくなります。

作業員によってコンクリートの強度が異なる
→ その事実を私が知る
→ 強度が異なることを「強度の差」と認識する

と流れることが分かります。決して、強度の差という抽象的な概念を先に認識するのではなく、強度が異なるという事実を認識してから、強度の差という抽象的な概念を取り出すのです。

文章に書く場合も同じで、抽象的な表現よりも具体的な表現のほうが素直です。素直な表現は分かりやすく、読みやすく、伝わりやすい表現です。先ほどの文5のうち、抽象的な表現を具体的な表現に改めれば、以下のようになります。

作業員によってコンクリートの強度に大きな差が生じている
→ 作業員によってコンクリートの強度が大きく異なる

具体的に書いたことで、文も短く、力強くなりました。文全体を比較しましょう。

(文5) 現状では現場の作業員が個別に考えて実行しているに過ぎないため、作業員によってコンクリートの強度に大きな差が生じているのではないか。

(文6) 現状では現場の作業員が個別に考えて実行しているに過ぎないため、作業員によってコンクリートの強度が大きく異なるのではないか。

最初の文 (文4) と比較すると、差が歴然とします。

(文4) 現状では現場の作業員が個別に考えて実行しているに過ぎないため、作業員によってコンクリートの強度に大きな差を生じさせているのではないか。

(文6) 現状では現場の作業員が個別に考えて実行しているに過ぎないため、作業員によってコンクリートの強度が大きく異なるのではないか。

ずっと分かりやすく、読みやすく、訴える力が強くなっていることが分かります。

(次回に続く)


有限会社トランスフロンティア
名古屋で通学制の翻訳講座を開いています。詳しくはスクール案内へ。
理工系専門書、IT・電気工学・その他分野の英→日翻訳を承っております。2001年創業以来1000件以上の翻訳実績。お見積もり・お問い合わせはこちらからどうぞ。