複数の反映 (2)

13 4月

(前回から続く)

最初はdifferentの意味について検討して訳を修正しました。さらに、原文で複数になっていることを訳文に反映させて、以下の訳文を得ました。

The tabs at the top of the window correspond to the different sections of a definition file.
(訳1) ウィンドウ上部のタブは、定義ファイルの異なるセクションに対応しています。
 ↓
(訳2) ウィンドウ上部のタブは、定義ファイルの各種のセクションに対応しています。
 ↓
(訳3) ウィンドウ上部の各タブは、定義ファイルの各種のセクションに対応しています。

訳3では「各……各種……」と同じ音が繰り返されています。この繰り返しを耳ざわりに感じる人がいるかもしれません。この繰り返し感を解消しましょう。当初の翻訳からずいぶんハードルが上がりました。技術翻訳でここまで要求されることはありませんが、翻訳の研究として語感も追求することにします。

「各」を別の表現に置き換えてみましょう。

(訳4) ウィンドウ上部のタブは、それぞれ定義ファイルの各種セクションに対応しています。

妙な感じがします。「それぞれ」と個別のタブに触れておきながら「各種」と具体性のない漠然とした記述になっています。

タブとセクションの対応関係が一対一であれば「各……各……」の繰り返しで対応関係を強調することができます。

(訳5) ウィンドウ上部の各タブは、定義ファイルの各セクションに対応しています。

しかし、タブとセクションの対応関係は一対一に限りません。複数のセクションをひとまとめにして1つのタブに割り当てているかもしれませんし (一対多)、1つのセクションが関連する複数のタブに割り当てられているかもしれませんし (多対一)、その両方かもしれません (多対多)。原文ではこのことに触れていないので、翻訳者が対応関係を決めつけてしまうと誤訳になりかねません。対応関係に踏み込まずにタブが複数あることを表現する必要があります。

原文に立ち返りましょう。原文では以下の事柄について述べていました。

  • ウィンドウの上部にtabsがあること。
  • 定義ファイルに各種のsectionsがあること。
  • tabsがsectionsに対応していること。

2番目と3番目の項目は、differentの訳を修正したとき (訳2) に既に反映されています。今回訳文に反映させたいのは最初の項目です。これらの3項目を無理にひとまとめにせずに、最初の項目を独立させれば、すんなりと書けます。

(訳6) ウィンドウ上部にはタブが並んでおり、定義ファイルの各種セクションに対応しています。

タブが並んでいるのですから、タブが1つでないことは明らかです。このような形で英語の複数形を日本語訳に反映させる方法もあります。

(連載終わり)


有限会社トランスフロンティア
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