関係代名詞の翻訳 (6)

23 2月

(連載第1回はこちら)

前回は、一言で翻訳するのが難しい関係代名詞について検討しました。

もうひとつ考えてみます。

(例15)
a bandwidth below which the BWCTL function will not reduce the original bandwidth

もちろんbelowを無視して翻訳してはなりません。

(×) BWCTL機能が当初の帯域幅を縮小しない帯域幅

このbelowが表す意味を明確にするために、例15の英文を、関係代名詞を使わずに1文として独立させてみます。

(例12)
The BWCTL function will not reduce the original bandwidth below a bandwidth.
BWCTL機能は、当初の帯域幅をある帯域幅以下に縮小しない。

つまり縮小の「限界」を表しています。それ以下に縮小しないと言っていますから「下限」がぴったりはまりそうです。

BWCTL機能が当初の帯域幅を縮小する下限の帯域幅

鮮やかに翻訳できました!

念のために、この訳が何を意味するか検討しましょう。

「当初の帯域幅を縮小する下限の帯域幅」という日本語は何を表すでしょうか。元の英文から離れて、この日本語訳だけを考えてください。
この日本語訳が意味するのはどちらでしょうか。

  • 縮小後の帯域幅の下限
  • 縮小幅の下限
├─────┤←─── 縮小幅 ───┤当初の帯域幅
 縮小後の
 帯域幅

「当初の帯域幅を縮小する下限の帯域幅」は上記のいずれにも解釈できそうです。元の英文の意味を知っていれば解釈に迷うことはありませんが、読者は日本語訳しか読みませんから、読者には意味がまったく通じないことになります。

工夫が必要です。

BWCTL機能で当初の帯域幅を縮小するときに維持する最低限の帯域幅
BWCTL機能で当初の帯域幅を縮小した後も維持する最低限の帯域幅

翻訳者は原文の意味を知っています。当然です。しかし、原文を読んで理解したがために、第三者の視点で訳文を読むのが困難になりがちです。翻訳は、いかに先入観 (思い込み) を取り除くかが勝負です。

(連載終わり)