best practice (2)

25 2月

技術翻訳でときどき現れる用語「best practice」。もともとはさまざまな経験や検討を重ねて確立された知見を指していましたが、現在の英語ではそのような知見でなくてもbest practiceということがあります。

例えば、このような英文が書かれます。

A best practice is to implement customized themes as child themes.

A best practice is to …と何やら物々しい書き出しですが、この英文は単に推奨事項を述べているに過ぎません。絶対にそうしなければならないわけではないが、そうすることが望ましい、ということです。そのような内容をbest practiceと呼ぶのは大げさな気がしますが、これが現実の英文です。まさにbuzzwordです。

日本語ではまだこのような用法は定着しておらず、カタカナで「ベスト プラクティス」と書けば、多くの事例から引き出され、ある程度定式化され確立された知見を指します。日本語で単に「こうしてください」と伝える場合にベスト プラクティスと言うことはありません。

とすると、上記の英文を翻訳するときにbest practiceを「ベスト プラクティス」とすべきではありません。

(×) ベスト プラクティスは、カスタマイズしたテーマを子テーマとして実装することです。
(○) カスタマイズしたテーマは子テーマとして実装することを推奨します。

何でもかんでも用語集の訳語を引っ張ってくればよい、というわけではないのですね。

注: ここでは訳文を対比させるために「……を推奨します」と訳出していますが、この訳についてはまた別の機会に検討しようと考えています。

私個人としては、ただの流行語としてのbest practiceが好きになれません。本来の意味で日本語に定着することには反対しませんが、無節操にあれもこれもベスト プラクティスと呼ぶ風潮まで日本語に定着することがないよう願っています。


有限会社トランスフロンティア
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